第9号の抄録

以下は、雑草研究第60巻3号(2015)に掲載されたものです。

中国・四国雑草研究会

 

中国・四国雑草研究会平成27年度例会,平成27年度公益財団法人日本植物調節剤研究協会近畿中国四国支部研修会,平成27年度近畿中国四国農業試験研究推進会議作物生産推進部会問題別研究会は,2015717()にホテルモナーク鳥取(鳥取県鳥取市)において合同開催された。本会では,「近未来の畦畔管理-最新技術の紹介-」を主題とし,以下の講演がおこなわれた。

 

二重ネット工法を用いた畦畔法面におけるシバ(Zoysia japonica)の植栽技術

伏見昭秀(近畿中国四国農業研究センター)

農村では人口減少とともに高齢化が進み,畦畔管理にも省力化が求められる。植生の視点からみれば,シバ(Zoysia japonica Steud)は抑草機能が高く,省力化に有効であり,景観にも馴染みやすい。しかし,従来の植栽法の張芝工法やポット苗工法では,農村で多く見られる斜度30°から45°の畦畔法面では難しいことが多く,芝生畦畔への植生転換は進まなかった。そこで,作業能率が高く,農家ら5人程度の組作業で,シバが植栽できる二重ネット工法を,共同研究機関のゾイシアンジャパン(株)と共に提案する。同技術によってシバを植栽し,一旦,芝生畦畔が成立すると,①従来の雑草畦畔では年4回から5回の草刈りが,夏期の1回は削減できるとともに,草刈り毎の作業量が軽減する。②芝生畦畔では草高が低いため,足元が見えやすく,草刈時に安全性が確保される。③芝生畦畔の維持管理は,草刈機および除草剤,双方が利用できるなど,省力的畦畔管理が合理的に進むと考える。

 

セル苗と抑草剤・除草剤を使ったシバ畦畔簡易造成法

村岡哲郎(植調研究所)

シバZoysia japonica(ノシバ)は草高が低めで歩行性や視認性に優れ,ほふく茎や根による土壌流亡防止力も大きいため,水田畦畔に望ましい植生と考えられる。そこで植調協会で開発した水田畦畔に低コストかつ省力的にシバを導入・優占化させる以下の方法を紹介する。

1.シバの地上ほふく茎を採取(45月)して1節ずつに切り分け,園芸培土をつめた128穴セルトレイに植え付け,毎日灌水すると3050日で苗が出来る。

2. 畦畔に予め非選択性除草剤を散布し,雑草が枯れてきたら4か所/2を目安に畦畔に穴をあけ基肥を入れ,上記の苗を植え付ける(56月)。

3. 植え付け1ヵ月後に,ビスピリバックナトリウム塩液剤に2,4-PA液剤またはアシュラム液剤を混ぜて散布する(注:水田畦畔でのアシュラム液剤の適用地域は近畿以西のみ)。以降,同様の薬剤散布を年に12回行い,必要に応じ追肥を行い,冬季に掃除刈りを行えば,12年で畦畔全体がシバで覆われる。

 

講演会には約70名が参加した。なお,講演内容は2015年度中に刊行予定の中国・四国雑草研究会会報第9号に集録される予定である。

会報の目次と抄録

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